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2030年1月1日
たけるは、いつになくすっきりと目覚めた。 先ず背伸びをし、いつも通り歯を磨く。ブラッシングは、口の中にホース状のスプー ンをくわえるだけ。 数秒で口の中が泡立ち、あとはすすぐだけで終わりである。 すすぐという行為は、舌を動かす運動が必要なので、口すすぎ器があってもすべての 家庭には行き渡っていない。 古典文学の勉強を少しやって、出勤の準備をする。昔はお正月をお屠蘇で祝ったこ ともあったっけと、ふと懐かしく思ったりする。 年齢の高齢化が進んで、サイクルが20世紀末から50年延びていて。青年の生活 が年寄りによって阻まれ続けているのである。 これは、青年同盟の究極の悩みであって、古い体質が社会を空転させているのであ る。 世界青年同盟は、設立されて25年になる。年寄り社会から青年社会へと意識の 転換を図ろうと初代イオという女性が唱えた言葉が根底であり、そのイオという女性 さえ、既に七十歳を越えている。 生命が、その欲する侭、いつまでも延びて行くことは、ある面では、青年の芽を摘 み呆けていることでもある・ 現に、今の社会を本当に牛耳っているいるのは、第二次世界大戦で働いたという 110歳の男であり、働き盛りの者は、90歳の大統領の首相たちなのである。 若年層は、どうしても彼等を乗り越えて指導者になりきれない。 青年同盟でさえ、その上層部の平均年齢50歳の男女によって、その中枢がおさえ られているのである。 足が麻痺すれば、クローンで補足させ(これは単なる洒落で、新しい足に付け替え るわけで)老人の中には、若者と同じだけの筋力を誇る者も数知れない。 財を重ねた者だけが、手術を繰り返すから若ものの方が、50歳半ばで死んだりする。 すると年寄りは、やはり生きねばと、余計奮い立ったりして、世代交代がないままに 21世紀も20年経ってしまった。 青年同盟の新年度会議には世界から30人が集まっていた。 ここで話される言葉は、21世紀に入ってすぐ考案された世界語であり、その世 界語を作ったのは、この世界同盟の若手で、当時20歳代のたけるたちであった。 古代研究家の青年たちは、言語表記の方法をコンピューターに入れて、母音を中心 の新語を造り出したのである。 例えば。創設者のいおも本当の名前は美穂という名前であったわけで、これがいお になっても何ら個名を呼ぶのに問題がないわけである。 古典文字は、今では表意文字の簡素化が基準になっていて、明解化しながらやっと 今日に至っているのである。○は全てであり、世界であり、太陽であり、昼である。 ○の書き始めがどこかで表す意味が違う。 日本の超古代文字に大変良く似ているのは古代にもきっと似通った文化があったのだ ろう。 21世紀の日本語で、今に生き残っている言葉にアイがある。これはいという意 を放つという意味で解釈されて使われている。 青年達は、言葉を労さずに意志伝達をインスピレーションで行う。 これは21世紀の学者が思考増幅装置を開発したお蔭で、今や誰でも携帯して 調達している。 ただ、インスピレーションは、波長を読みとられると情報が筒抜けになるから、青 年同盟の会議は、新世界語で進行することになっていた。 「v地区の団員から、長老が青年を組織に入れまいとしているそうだ。困っている。」 「あの老人共は、何十年も自分勝手に政治をしていて、まだ後輩に道を譲ろうとしな いのだ。暇が有れば戦いを起こそうとする。」 「それを止めようとするのは、いつも青年達だ。そして戦いをしなければ、功績は長 老の功績にしてしまう。」 「ああ、もう我慢ならない。いつまで治政者でいようとするのか。世界連邦王の20 「それは危険じゃないか。」
「いや、そいつも親父を許せないと言っているそうだ。若い者が、若い娘に子を産ま せるなら世代は交代するのに、あいつは百十歳で又三十歳の女房を娶ったそうだ。」 「ふふ、俺等だってまだ結婚してないのにか。」 「あいつらの裏切りは、ただ金と名誉が欲しいからなのさ。」 「でも、みんな。」 青年同盟の代表団の中で一番若いはるの声に一同は、ちょっと声を止めた。 「裏切りたくなるんじゃない?若い者がみんな力もない、長老の言葉に反発さえしな い、そんな希望のないあいつらになんで同調しなくちゃならないの?」 いやしくも二十一世紀の教育を受けている私たちが、なんでこんなに隅っこに追い 込まれた話題を、ぐちぐち繰り返すのよ。 言われたことを、そのまま順奉していて、毎日平穏にすごしているから、これが平 和なんんだと思っているだけじゃない。」 「そうだ、我々は、歴史を作るチャンスを失っているような気がする。長老の手で頭 の上を押さえられて、抜き差しならなくなっている。この世界を若い者の手に取り戻 さねば。」 「青年同盟は、イオの年で作られ、いつまでも対策ばかり練っていたと思う。でも、 もう活動を起こすべきだ。」 「二十一世紀の後半に世界滅亡論というのがあったそうよ。」 「結局、新しい島が一つ出来、古い山脈が一つ沈んだだけでチョンだった。ただし、 核は今や月にまでびっしりだ。」 「どこかで浄化しなければ・・・」 「兎に角、CUKの造成を全面的に停止させようよ。」 CUKとは、性力バランスホルモンのことで、長寿剤である。 この普及が、最年長寿者を250歳にしようとしているのである。 「青年同盟は、今日の出席者だけの地球若返り決起の会を発足させることにしないか 。」 「そうだ、このメンバーに入れる人は、以後五十歳を目途にしよう。」 「それじゃ、何もならない。やはり30代ぐらいまでが青年だよ。」 「じゃ、既に僕ははみ出してしまう訳だな。」 たけるは、口をへの字に曲げてつぶやいた。 「委員長が、もう40歳だもの。やはり50歳くらいにしておかないと、我々に造反 のチャンスが一生ないなんて、情けないじゃないか。」 48歳の自称あらは、若い者を目坐えて、手では机をたたくように立って言った。 「あらは、50歳までこれ以上は青年と言わない。いいね。」 そこで皆、どっと笑った。50歳の者が青年ではないことを知っていて、青年の限度を 切っていること、それ自体、いかに下らない決断であるか知って居るだけに、その笑 いは自分達を散々卑下し41歳になる。 生きていることに憂鬱の気を感じている。人の命が地球より重いという思想が21 世紀では、ある種の重荷。 頭脳は、どうしても年寄りに負けるし、かといって世界を動かしてきた歴史で、今 日ほどあらの実力が問われなかったことがあったかと思うのである。 50歳までに、殆どが死に絶えた一つの歴史があった。 その社会を動かしたのは、30歳から40歳の者であったろうし、それも不可なく 歴史の1ページを作れたということは、あむこそ不要のものということだと思えるの である。 「あむに死を与える方法を先ず考え、世界にあるCUKを破棄する運動を展開しよう 。」 会議は先ず、その方向を決定した。CUKの構成物質を一つ変質させようという訳 だ。 「DNAにもう一度、致死点を与えるのだ。それは、科学者のきゆに研究してもらお う。だれにも判らず、気が付いたら致死点を通過する様だ。」 きゆは、遺伝子学の助教授であった。博士論文も評価されているのに、教授の数が 満杯でなかなか口が回って来ないのである。 おむは、がむしゃらに20世紀を生きてきたから、いつまでも自分達の道を後進に 譲る気がなかった。矍鑠としていてまるで若い体躯であったし、一度なった教授職を そうそう手放しはしない。 そこできゆは、もう50になろうとしているのに研究室一つもらえてないのである。 しかし、それがこのたびの役に立った。 彼が何を研究しても、同僚のだれも注意しないのである。 CUKを、殺すことをもくてきとしてありとあらゆる実験をしていたきゆは、ある 日、CUKが異常に昂進するビールスを見つけだした。覚えているだろうか。昂進は 死へ繋がる・・・。きゆは、そのビールスが20世紀後半に猛威をふるったため、あ の風邪のビールスA型であることに行き当たった時、思わずショックで目眩を起こす ほどであった。当然21世紀にビールスAは影も形も無くなっているはずであった が、そこは研究室。どこからか培養体に入り込んだ?ようである。ビールスAとCU KのDNAは、一時昂進状態を発揮し、ビールスのDNAと接触し、癒着して、いわ ゆる風邪を発生させた。 21 世紀でも風邪はやっぱり万病の元であると言われているから、W症状の責任は、 元のビールスA型の起こした症状としてみなされるはずである。そこでDNAが致死 活動することなんか・・・は、伏せておけば良い。きおはビールスAを取り込み薬を MACと命名した。 若いきおが発明したエネルギー昂揚剤MACは、あっという間に世界へ売り出され た。 非常に安価であった為に、二十世紀の科学調味料のように薬剤に一つずつ添加され た。 「ところで。ビールスAは、いつ流行することにしているのか。」 「ちょっと待ってくれ。この昂揚剤は、まるで全部の食品に添加されてしまった。ビー ルスAが流行すると若い者にも影響が出るじゃあないかい?」 「ジュースの中にも入れているじゃあないか。」 「まるでビタミン剤と同じ扱いなんだよ。」 「そりゃそうさ。髪の毛もふさふさすると言うし、血色もよくなるというし、実効の 面からすると、MACはすごい精力剤なんだから、企業だって売らんが為には必死さ 。」 「でも、今、ビールスAが流行って、MACと反応したら、おむだけならともかく、 あらもうも死に絶えてしまうぞ。」 「一度老人因子を持ったもののみに反応するようにしてはどうか。」 老人因子は、40代半ばから既に活動し始めて居るんだよ。俺たちはまだ死ぬには 早いではないか。」 「とにかく、せっかく取り組んでいるMACを利用しない手はないよ。」 「きお、20世紀に流行ったというビールスAだけど、又流行るあてはあるの?」 「いえ、ビールスAは20世紀で沈殿しているんだ。そういう菌を使わないと、致死 因子がどういう訳で発生したか、すぐ判ってしまうし、そうすると、青年同盟は、殺 人を行ったことになるだろう?なるべく判らない方法で因子を発生させるには、うっ かり忘れたような、しかし余り気にならなビールスが一番と思ったんだよ。」 「その案は、良いと思うよ。」 「しかし、どうしたら目指す老人にビールスAを感染させ、青年には感染させないと いう方法がとれると思う?」 「そこなんんだ。ビールスAを活躍させる前にAを甲状腺かなんかで反応させてみて はどうかなあ。」 「純粋な若さと、老人の若さはどこか決定的に違うと思うんだよね。」 「そうだ、そこから調査しなおしてみよう。」 「同じ30歳の体躯でも、100歳の人間の30歳なみの体と本当の30歳はどこか違う んじゃあいかなあ。」 「その違いこそ、学者が半世紀にも亘って埋めてきたものたもの・・・。長生きのた めにね。」 「CUK常用者だけに特別反応するビールスAを開発して欲しいんだよ。」 「結局、きおは希代の大科学者なんだよ。でも、もうMACは使用対象にはならない よ。」 「業界からダメージをつけて早く回収してはどうかね。」 「でも、MACのお蔭で、青年同盟は莫大な運用資金を稼いだ。折角の収入の道をと だすのは、馬鹿げていないかね。」 「それより、ビールスA にかかっても平気な中和剤を若い者に飲ませるって野はどうかな。若者を対象に年齢 制限して売るのさ。」 「例えば、60歳未満ならなんとかこの薬が効力を発するが、60歳代になるともう 副作用が起こる・・・とかね。」 「もっと年齢を上げくれんかね。私の母が今、80歳で、私の食生活を賄ってくれて いるんだ。100歳以前の者の命を絶つのは殺人だと思う。」 一同は笑い転げた。 「年齢は、どこに線引きをするか、再検討しなければね。160歳なんてのは、もう 考慮の対象外だからな。」 「そうだ、噂にすれば良い。きお、そのぐらいの範囲で考えられるか。」 「やってみよう。ビールスAを完全に殺してしまうものを作れば良い訳だ。データー 作りなんか協力を頼むよ。」 「いいとも、青年同盟に研究所を作ろう。きおは大学を去って、研究所の所長になる のだ。堂々とやるんだよ。夢が湧いてきたぞ。」 「待ってくれ、俺の所長はまずいよ。」 「そうだよ、それまずいよ。やはりたけるの名前にしとこう。若いきおにすると、何 かが起こったとき、すぐ疑いの目がきおにいくと思う。 「そう、老人社会だからね。」 「ましてや、本当に何かを起こすんだもの。」 青年同盟の研究所は間もなく「健康衛生研究所」の看板を掲げた。 MACの売り上げは、青年同盟の懐をもだんだん富ませていたから、ビルの一つや二 つは苦にならなくなっていた。 青年同盟の気は溢れていた。少なくともその研究所の中には、燃える若さが溢れて いた。 致死因子を失った老人達の偽あらのDNAはADMと非常に良く融和していること が判った。即、人間本来のDNAがCUKを得て、新しい活躍をする。それが新薬A DMを食らうことで、より一層若返るのである。 又、若いあらやうには、あむより自主ホルモン分泌が多いことが確認された。 要するに、今から伸びようとする力は、あらやらに美しい血液を供給している訳だ。 ただし、たけるたち四十歳代になると、すでに致死因子が順調に働き始めていて、 これは早くCUKを服用することで長寿が保たれる訳で、ただこのCUKは、若者が 一ヶ月働いてやっと買えるほどの高価なものだから、おいそれ手に入る代物ではない。
買おうとしている内に死に至ってしま
う例もままある訳で、その点、功なりとげ金銭
的にゆとりのある老人は浴びるほどCUKを飲めるということで、おむの方が元気な ことがままある訳だ。 「DNAの組み替えに関して、CUKは本当に強靱だと思う。この効力を失わせる為 のADMはやっぱり効果抜群と言えると思う。」 「もっと効力を伸ばしてみよう。」 「全てのものには、上昇点がある時は、必ず下降点があるもんだ。ADMをもっと効 率的にしてみよう。」 きおは、新ADMをCACと名付けた。 CACは老人対象に売り出された。 因子を活性化させる、用いるとらの力を得たように体が軽くなる、という効力で・・ ・。 CACは、CUAの活力を倍の早さ胃で消耗させ、CUAに関する因子を殺した。 CUAは今までの力を実際は相当な速度で失っているはずであった。 「さすが、きおだよ。」 「でも、これ、どれくらいで効力を発揮するんでしょうか。」 「加速が付けば付くほど早くなると言う訳だ。年寄りが好んで使用するようにすると 良いと思う。5年くらい経てばCUA使用者が、その効力を現すことになるだろう。 「5年も先の話か。」 「それはそうさ。速効性があると、だれも飲まなくなるじゃないか。5年ぐらいは待 つべきだ。50年も100年も待つことを思えば5年はあっと言う間だよ。」 「DNAが、しっかり致死因子を回復するための5年は短いもんだと思うよ」 CACは、老人(オム)立ちに爆発的に売れた。又、活性剤として、金持ちは沢山使 用し、ADMほどでもないが、沢山の収入を青年同盟にもたらしたのだった。
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